院長日記

第64話 “シミ”の治療の実際


加齢とともに、多くの方が一番嫌がるものの一つが、“シミ”だと思います。
“シミ”と呼ばれるものにも実は幾つかの種類があって、それぞれに治療法は異なるのですが、いちばん代表的なシミ(当院では“境界型のシミ”と呼んでいますが)について、実際の治療とその経過について説明します。
この“境界型のシミ”は、顔の頬骨のあたりや、眉毛の外上方、鼻の骨の上などの、一番(物理的な)刺激を受けやすい場所に発生します。
その他、若い頃によく日焼けをしていた色白の方の場合、いつしか肩のあたりに出現してきたり、水仕事などでよく手が荒れていた方の場合、いつしか手のひらに出現してきたりします。
いずれもが、メラノサイト(色素を作る能力のある細胞で、一定以上の刺激に対して色素を作りだす事で肌を守っているのですが)がダメージを受けていて、四六時中肌を守ろうとして何時までも色素が残っている状態な訳です。
それ故、なかなかご本人の努力で消えるものではなく、少しずつ大きくなってきたり、濃くなってきます。
治療は、Q発振の色素レーザーという機械を使用するのですが、当院では開業以来このレーザー機器を使用していて、現在は2代目になります。
この光学医療機器が出現するまでは、ダ―ムアブレージョンと言って、メラノサイトの深さまで物理的に削る手法でしたが、医師の経験と勘に頼るしかなく、やはり安定した結果はなかなか残せないのが実情でした。
余談ですが、未だにエステサロンで“シミ抜き”と称した施術が行われている場合があるようですが、これらは、電気を流して、その熱によってメラノサイトを破壊しようとするものですが、全く論外の方法で、小さな火傷跡に出来たカサブタを見て、こうしてシミが浮き上がってきて消えていく、等と無茶苦茶な説明をしていたりします。
まあそれ以前に、医師法、医療法違反行為ではありますが。
以下、“シミ(境界型の)”の実際の治療経過を載せておきます。
境界型のシミ(術前)
1:左の眼窩外側に出来た“境界型のシミ”
境界型のシミ(術後-直後)
2:レーザー照射は10秒ほどで、多少の痛みを伴います(麻酔を必要とするような痛みではありません)。レーザー照射直後は、ホワイトフェノミナンといって、このように白くなりますが、これは数分で消失します。
境界型のシミ(術後-処置済み)
3:レーザー照射後、クリームを塗布して、紙テープを貼っておきます。
境界型のシミ(術後1週間)
4:非常に薄いカサブタが出来て、概ね1週間程度ではがれていきます。シミは消えていますが、よく見ると、少しまだ赤みがあります。これは皮膚の表面がまだ出来上っていない状態で、あと数日でほぼ完治です。
実は、カサブタが剥がれて、まだ赤みがある状態の時期がとても大事で、日焼けを避ける事と、擦ったりしない事が必要です。これを怠ると、消えたはずの“シミ”が再度出現する場合があります。
当院でも、20人に一人程度の割合で、このようなケースがあります。その場合は、時間はかかりますが(3ヶ月程度)、放っておけば自然と消えていきます。
このレーザー機器が登場した頃は、シミは治療してもいずれ再発してくるものと言われていましたが、実は再発率は非常に少ないと思います(理由はここでは書きませんが)。