院長日記

第16話 ドクターズコスメのいかがわしさ


化粧の歴史は随分古く、この手の歴史を追いかけると、その時代の文化等に触れる事ができてなかなか興味深くありますが、昨今の化粧品の世界があまりに酷く見えるのは私だけでしょうか。化粧(メイクアップ化粧品)は、すぐにきれいに見せれると言う点で非常にすばらしく、これを否定するものではないのですが、やっかいなのは基礎化粧品の類い(化粧水、乳液、ナイトクリームなど)で、正確には「皮膚を健やかに保つ等の目的で使用される化粧品」と言う物です。
仕事柄、基礎化粧品に対する相談は多く、自ずとこの業界の事を調べる必要性にかられ、それはもう驚愕の連続でした。本来の基礎化粧品の目的とは乖離した、ただ売らんがための商品としか言いがたい状況であると思えます。
この手のもので、色が白くなったり(よく耳にする、美白なるあまりにも曖昧な言葉が象徴的ですが)、肌が若返る事はなく、元来化粧品とはそう言う物ですから、効能を謳う事は禁じられている訳です。消費者にしてみれば、何かよいものがあるはずで、現に女優さんはよいものを使っているからきれいんだ等の幻想をいだいている方は多く、業界側はまさにこの点がねらい目なのでしょうね。そのため、いかにもきれいになりそう、と言った広告戦略をとっていますし、訪問販売で一生懸命売り付けようと躍起になっています。
私の経験上、色んな化粧品に飛びつく方は概して肌がきたなく、実は保湿以外にほとんど有効なものはない、逆に合成界面活性剤によって悪く作用しているのではないかとさえ思える場合も少なくありません。
そこで今回のドクターズコスメとやらですが、医者が化粧品成分を開発している訳でなく、配合を医学的に決める訳でもなく(化粧品成分などは元来ほぼ決められているし、配合も自ずと決まってきますから)、それなら何なの、と言う事になります。実際はこの程度の事なので、上記の如く、やはり売らんがため、と言わざるをえないでしょうね。医者と言うブランドで売ろうとする結果、逆に医者の信用を落とす事にならないかと心配なんですが。