院長日記

第41話 デトックスブーム(?)の中でのキレーションについて


体内に蓄積した有害な金属を、キレート剤(幾種類かありますが)を点滴で静脈内へ注入する事で、尿中への排泄を促そうとする治療を、キレーション療法と言います。
カドミウム中毒、砒素中毒、水銀中毒などで行われる治療法のひとつで、本来は有害な重金属に対して行われるものです。
ところが、最近になって、動脈硬化の予防に対して、血管壁に存在するカルシウムをキレーションすればよいのでは、との動きがあって、その他、関節炎やら何やら色んな疾患の予防、つまり抗加齢医学(アンチエイジング)と称してのキレーション療法がクローズアップされてきています。
まだまだ賛否両論、喧々諤々で、エビデンスも確立されたものではないのですが、まあこのあたりはよいとして(デトックスブームに対する考えは、以前FORUMの方で書きましたが)、どうも気になるのが、これをアンチエイジングと称して美容に利用している連中が増えている現状です。
健康体の人に、毛髪中の有害金属の含有量を調べて、挙句はこのアミノ酸を飲め、この抗酸化剤を飲めと脅す手法が、どうも増えています。
本来のキレーション療法自体が、専門家の間で否定的なものが多い現状で、アンチエイジングブーム、デトックスブームに便乗した上記の手口には、少なくとも現時点では手を出さないで欲しいと思います(かなり危険でさえありますから)。
重金属による中毒症の場合は別ですが、食生活の見直しや、運動不足の解消のほうがよほど有効であるに違いありません。