院長日記

第19話 いい医者の選び方


いい医者を選ぶ方法について、医者の私があれこれ言う事自体おかしな話なのですが、無料メール相談のほうでこの手の相談が多いので、私の考えを書いてみます。
巷に、名医、あるいはいい病院ガイドなる書籍や雑誌が多くあるのですが、私はこれらのものに全く信をおいていません。医療サイド側の都合で書かれているものが総べてで、ほとんどがその設備と肩書き(論文と言う、患者側からは全く無関係の、全てとは言いませんが、ほとんどが無意味な紙切れの類いで決まるものですが)に依っています。他に信をおかない理由も山とありますが、ここでは一般診療の事ではなく、美容外科の範疇に絞って考えてみます。
一般診療の場合、その症状から診断をつけた上で治療にあたるので、上手な医者のほうが診療費が安くつく(当然このほうがよいに決まっています)のですが、おかしな事に、上手でない医者のほうが、病気が長引き診療報酬が高くつく、と言う事があります。この点では、美容外科はまったく異なっていて、できるだけ正確な治療を行うほど、かかる費用はやすくつきます。いわゆる、出来高性かいなかによるものですが、ただ、やっかいな事に、受けた治療の比較が、現実的にはほとんどできません(受診者の方にとっては)。また、評判と言ったものが拡がりにくい点もあって、どこで治療をうければいいの、と悩む事になります。そのためもあってか、広告宣伝の多いところが、何となくよさそう、信頼できそう、と言う事になります。一方で、広告宣伝をしない(できない)施設は、派手な広告を非難し、権威(所謂肩書き)で対抗しようとします。前にも書きましたが、日本美容外科学会が二つ存在する背景にはこのような事も大きく関与しています。
広告が派手なところが良い悪い、チェーン展開しているところが良い悪い、形成外科医でないから良い悪い(形成外科と言う診療科目の認可にあたって、美容外科は除外されたはずですが)、なんて事は、実はいい医者選びには全く関係しないと断言できます。
美容外科で治療を受ける方は、まず急を要しないでしょうから、できればあまり自宅からは遠くない、実際に診察を受けられて十分納得のできる医者を御自身で判断する以外、残念ながらいい方法はないと思います。ただ、誰が責任者なのか判らないような施設や、ろくに説明責任をはたさないような医者は論外ですが。